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桐野夏生「メタボラ」の感想。分厚いけど面白い!

桐野夏生「メタボラ」

旦那の買った本シリーズ(笑)。桐野夏生さんの本は初めて読みました。このタイトルと分厚さは自分では買わなかっただろうけど、飽きることなく読めました。久しぶりに長編を読み、私はちょこちょこ読みなので結構時間がかかり、最初は訳が分からず、昭光の宮古弁が違和感がありましたが、最後の方は自分でも「オゴエッ」とか「だいず」とか使ってしまいそうで、ジェイクが出てくるのが楽しみになりました。

あらすじ

沖縄の密林で必死に逃げる〈僕〉は、独立塾から逃げ出した宮古島出身の若者「昭光」と出会うが、自分が記憶喪失であると気付く。昭光から「ギンジ」という名前をもらった〈僕〉は昭光と行動を共にしていく。2人はどこに向かうのか、〈僕〉の正体は?

↓※以下はネタバレを含みますので、未読の方は注意してください!

冒頭は読みずらい

物語の序盤は自分が何者かも分からず、昭光の訛りもあってかなり読みずらい印象でした。でも読み進めていくうちに訛りにも慣れて、この先どうなるんだろうと気になってどんどん読んでしまいました。

別の道を行くギンジとアキンツ

密林で出会い行動を共にするギンジとアキンツですが、途中からは別々に行動することになります。そして最初は〈僕〉視点だけだった物語も、アキンツ視点でも交互に語られ、同じ出来事でも違う見方があると気付かされます。

中盤からはかなりダーク

中盤、〈僕〉が記憶を取り戻してからはかなり暗い展開です。集団自殺、DV,家庭崩壊、離婚、ワーキングプア、沖縄の問題など現実の問題がこれでもかという程突き付けられます。でも描写がかなりリアルで、特に派遣先の工場で作業するシーンなどは作者も実際に働いたことがあるのかと思うくらい細かく書かれていて、映像が目に浮かぶようでした。

現代の「戦争」

印象に残ったのが、住み込みで働いていた時に親切にしてくれた専務の「磯村君にとっては戦争なんだろうから。」という言葉です。専務は実際の戦争を体験した世代ですが、現代は戦争はなく一見平和に見えるけれど、一歩間違えれば簡単に崩れてしまう日常。毎日をギリギリで生きている人は結構多いと思います。

「こんなこと」

また、妻に暴力を振って追い出し、子供2人の教育費も出さず、最終的には自殺してしまうギンジ(雄太)の父親の「あれ、こんなことのために一生懸命だったのかってな」という言葉も印象的でした。私も結婚して、子育てして分かるのですが、自分一人の時と違って家族がいると支えにもなりますが、その分責任というか「ちゃんとしないといけない」という重責が重くのしかかります。時々ふと全て捨てて逃げ出したい衝動に駆られるときもあります。特に主に家計を支える男性は嫌な仕事でも家族のために頑張っているという人は多いと思います。父親が何がきっかけでDVするようになってしまったのかは結局分かりませんが、一度「こんなこと」と思ってしまうと、家庭はあっけなく崩壊してしまうのかなと思いました。家族は当たり前に家族なのではなく、みんなで努力して作っていくものなのだなと改めて思いました。

意味深なラスト

ラスト寸前までヒヤヒヤする展開ですが、意外にもラストは爽やかというか、希望を感じるような前向きな感じでした。でも明るい未来が待っているとは思えないし、複雑です。読み終わった後もすっきりせずモヤモヤした感じが残りました。これなら途中の何気ない日常が続けばいいのにと思ってしまいました。

お金は大事

これは私の父の話ですが、昔「お金より大事なものがある」かどうかで軽く口論になったことがあり、その時に父が「お金がないと大事なものも守れない」と言ったのを思い出しました。お金がすべてではないけど、最低限のお金がないと友達も恋人も家族も自分自身も結局は滅ぼすことになるとメタボラを読んで強く思いました。お金のため、そして家族を守るために必死に嫌な仕事でも頑張っている人はたくさんいると思います。好きな仕事をするのはもちろんいいのですが、嫌な仕事でも守るものがあって頑張るのは尊いことだと私は思います。

まとめ

私は途中からは親視点で読んでしまいました読む世代によって感じることは様々だと思います。小説だから多少大げさに書いてあると思いますが、決して小説だけの話ではなく、これより酷い状況の現実もあると思います。何気ない日常がかけがいのないものなんだなと思いました。桐野夏生さんの他の本も読んでみたいです。

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